虐待防止のための指針

1.事業所における虐待の防止に関する基本的考え方

高齢者に対する虐待は、高齢者の尊厳を脅かす深刻な事態であり「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)に示すとおり、その防止に努めることは極めて重要です。当事業所では、同法の趣旨を踏まえ、また介譲保険法が掲げる「尊厳の保持と自立支援」という目的を達成し、虐待の未然防止、早期発見・迅速かつ適切な対応等に努めるとともに、虐待が発生した場合には適正に対応し再発防止策を講じます。そのための具体的な組織体制、取組内容等について、本指針に定めます。

なお、高齢者虐待防止法の規定に基づき、当施設では「高齢者虐待の定義」を下記のような行為として整理します。また、介護保険法にも人格尊重義務がうたわれていることや、当施設のサービス内容及び社会的意義に鑑み、当施設職員による虐待に加えて、高齢者虐待防止法が示す養護者による虐待及び、セルフ・ネグレクト等の権利擁護を要する状況、ならびに虐待に至る以前の対策が必要な状況についても、「虐待等」として本指針に基づく取り組みの対象とします。

 

身体的虐待

高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

(例)平手打ちする・殴る・蹴る・物を投げつける・引きづる・無理やり食事を口に入れる・ベッドに柵を付ける・外から鍵をかけて閉じ込める等

 

介護や世話の放棄・放任(ネグレクト)

高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。

(例)異臭がする・髪や爪が伸び放題である・皮膚や衣服が汚れている・脱水や栄養失調の状態である・他の家族による暴言や暴力を放置している・おむつ交換をしない・ナースコールを使わせない等

 

心理的虐待

高齢者に対する著しい暴言または拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

(例)怒鳴る・罵る・子ども扱いする・無視する・トイレを使用できるのに本人の意志に反しておむつを使う等

 

性的虐待

高齢者にわいせつな行為をすることまたは高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

(例)性的行為を強要する・わいせつな画像をみせる・本人を裸にする・人前で排泄させたり、おむつ交換をする等

 

経済的虐待

高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

(例)寄与や贈与を強要する・金銭などの着服や窃盗をする・立場を利用してお金を借りる・生活に必要なお金を渡さない等

 

2.虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項

1)虐待防止検討委員会の設置

虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討することを目的として、委員会を設置します。

 

2)委員会の組織

委員会の構成員は、各部署から1名選出します。必要に応じて、外部有識者として社会保険労務士、社会福祉士等の専門職に相談、委員に任命すること、地域包括支援センターや浜松市に相談・助言を求めます。

委員会の責任者として委員長を置き、これを当事業所の管理者が務めます。

また、副委員長を管理者以外の介護職員とするとともに、両名を「虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者(以下、担当者)」とします。その他、各構成員の役割は下表のとおりとします。

 

構成員と役割

・管理者 委員長(責任者)

虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者

利用者・家族等への説明・相談対応

 

・介護職員 副委員長

虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者

虐待防止対策の周知・進捗管理

 

・看護職員

 

・調理職員

 

・事務職員

 

・外部有識者(社会保険労務士・社会福祉士等)

第三者かつ専門家の観点からの助言

 

3)委員会の開催

委員会は、委員長の招集により年間計画に基づき、年2回以上開催するとともに、必要に応じて随時、開催します。

重大な虐待事例が発生した場合は、臨時委員会を開催し、対象者の安全確保、改善に向けた対応方法等を検討します。

委員会は、集合形式を原則としますが、必要に応じてオンライン等を活用して行います。

 

4 委員会における検討事項(所掌事項)

委員会では、以下の項自について検討を行うとともに、必要な取組事項を決定します。

①虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること

②虐待の防止のための指針の整備・見直しに関すること

③虐待の防止のための職員研修の内容及び企画・運営に関すること

④虐待等に職員が相談・報告できる体制整備に関すること

⑤従業者が高齢者虐待を把握した場合に、浜松市への通報が迅速かつ適切に行われるための方法に関すること

⑥虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策に関すること

⑦前号の再発の防止策を講じた際に、その効果についての評価に関すること

⑧虐待事例が発生した場合は、委員会で事例検討を行うこと

 

5)結果の周知徹底

委員会での検討内容及び結果、決定事項等については議事録その他の資料を作成し、職員に回覧するなどして周知徹底を図ります。

 

〈委員会で検討すべき具体例〉

早期報告が行われたかどうかの確認

事例検討

〇家庭内の虐待(養護者による虐待)の事例検討

〇養護者以外による経済的虐待の事例検討

〇当該事業所職員による虐待(養介護施設従事者等による虐待)の事例検討

〇虐待に至らないグレーゾーンの事例検討

〇虐待かどうかわからないが虐待が推測される事例検討

〇現在進行中のすべての事例を、繰り返し、定期の委員会に議題として提出する

〇終了した事例に関しても、今後の虐待防止に資すると判断される場合は議題とする

事業所の事例対応の適切さに対する評価と助言

事業所の高齢者虐待防止のための指針及びマニュアル等の作成・改定

研修会の開催(市や地域包括支援センター等が行う研修会への参加で代用可)

〇研修を事業所職員全員が受けられるよう配慮する。

(市や地域包括支援センター等が行う研修会のアーカイブ等の視聴で代用可)

ヒヤリハット報告書の記載内容の分析と対策の検討

 

3.虐待の防止のための職員研修に関する基本方針

経験が豊富で技能が高い職員ほど、虐待事例・困難事例に適切に対応できます。それゆえ、全職員の介護技能の研鑽が重要となります。一方で、優れた職員であっても、利用者に対して虐待を行う可能性があり、経験者でも内省が必要となります。これらのことから、高い介護技術の獲得と内省する機会として全職員を対象とした研修会を実施します。研修会は、本指針に基づき、研修プログラムを作成し計画的に実施します。

1)定期開催

全職員に対し、年1回以上の研修会を実施します。県や市が行う「高齢者虐待」や「権利擁護」に関する研修会への出席をもって、定期開催の研修会の参加とすることもできます。

2)新規採用時

職員の新規採用時には、新人職員研修カリキュラム内に定め、虐待等の防止を図るための研修を必ず実施します。

3)外部研修会へ参加

県や市が行う「高齢者虐待」や「権利擁護」に関する研修会に職員が参加できるよう、業務の調整等を行います。

4)研修内容

研修内容は以下のものを基本とし、詳細は虐待防止検討委員会により定めます。

①自身の介護状況の振り返り

②虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識

③本指針の内容に基づく取組み

④虐待通報義務の履行、ならびに虐待等に関する相談・報告の方法

⑤委員会の活動内容及び委員会における決定事項

5)研修記録

研修の実施回ごとに、研修実施記録を作成し、使用した資料とともに、記録薄ファイルに綴り、保管・管理します。

6)研修内容の周知徹底

研修内容の周知徹底をはかるために、研修の開催日・時間帯等について委員会で検討し、参加率向上に努めます。

 

4.虐待(虐待の疑い)等を発見した場合の対応方法に関する基本方針

1) 虐待(虐待の疑い)等を発見した場合

虐待を疑う場面に立ち会ったり、虐待と認められる行為等を発見した場合、速やかに管理者に報告してください。

なお、被虐待者の心身に深刻な影響や後遺症を生じる可能性の高い虐待事例に遭遇した際は、即時、警察あるいは救急車を要請してください。

また、通報者の秘密は守られます。

通報した際に、氏名等を名乗らないことも可能です。

 

相談先

養護者による高齢者虐待にかかわる相談は、地域包括支援センター(高齢者相談センター)、または各区役所長寿保険課で受けています。

 

養介護施設従事者等による高齢者虐待にかかわる相談は、下記の窓口で受けています。

 

〇高齢者福祉課(電話番号:053-457-2361

〇介護保険課 (電話番号:053-457-2875

〇福祉総務課 (電話番号:053-457-2329

〇各区長寿保険課

 

〇目前で暴力が行われているとき 110番へ

〇医療がすぐに必要な病気やけががあるとき 119番へ

 

2)施設内での報告及び対応

虐待の被害を受けたと思われる高齢者・利用者を発見した場合には、速やかに管理者に報告します。

報告を受けた管理者は、下記の対応もしくは対応の指示を適時適切に実施します。

①当該利用者の心身状況の確認・安全確保

②浜松市への通報の有無の確認及び必要と思われる場合の通報

③法人本部、家族等への報告(第一報)

④関係職員等への事実確認、関係職員の勤務状況等の確認

⑤委員会の臨時開催及び原因分析、事後対応・再発防止策の検討及び対策の決定

⑥事後対応及び再発防止策の周知・実行

⑦関係者への報告(第二報以降適時)

⑧必要に応じた懲罰、委員会への報告

⑨委員会における事後対応及び再発防止策の実行状況の確認・評価

⑩虐待事例の事例検討会の実施

 

3)静岡県及び浜松市が実施する高齢者虐待等に係る調査協力

静岡県及び浜松市から、高齢者虐待等に係る調査協力依頼等があった場合には、速やかに協力します。

 

5.虐待(虐待の疑い)等を発見した場合の相談・報告体制に関する事項

1)虐待が疑われる事例を発見した場合の報告体制

虐待等が発生した場合の相談・報告の体制は、本指針4の(1)、(2)、(3) に準じます。

なお、虐待かもしれない感じた事例を経験した時、虐待してしまったかもしれないと感じたときには、委員会に「虐待ヒヤリハット報告」をする必要があります。

2)事故報告、ヒヤリハット報告の報告体制

事故報告ヒヤリハットは管理者に報告します。

3)虐待が疑われるような、事故・ヒヤリハットの取り扱い

事故報告ヒヤリハット報告委員会は、自己報告及びヒヤリハット報告に虐待が疑われる事例が含まれていないかを確認をします。虐待が疑われるような事例を発見した場合は、本指針4の(1)、(2)、(3) に準じます。

 

6.成年後見制度の利用支援に関する事項

虐待等の防止の観点を含めて、成年後見制度や、その他の権利擁護事業について、利用者や家族等へ説明を行います。

 

7.虐待等に係る苦情解決方法に関する事項

虐待等に係る苦情は、当施設において包括的に設置する苦情対応窓口において受け付けます。

苦情対応窓口及び虐待対応については、重要事項説明書に示します。

受付担当者は苦情等の内容を精査し、虐待等に関係する内容が含まれている場合には、苦情対応責任者を通じて、委員会に報告します。

 

8.利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項

本指針は、利用者・家族、後見人、当施設に来所した方及び当施設の職員並びにその他の関係者がいつでも閲覧できるよう、施設内に提示するとともに、当法人ホームページに掲載します。

https://daidainoie2021.jimdofree.com/

 

9.その他虐待の防止の推進のために必要な事項

1)虐待防止担当職員の配置

虐待の防止に関する措置を適切に実施するための虐待防止担当者を配置します。担当職員

は、委員会委員の職員とします。

2)他機関との連携

県、浜松市、浜松社会福祉協議会等、県、市、及び他施設・他事業者との連携の機会及び同団体その他の機関が開催する研修会や情報交換等をする場には積極的に参加し、利用者の権利擁護に関わる研鑽を常に図ります。

 

10.本指針の改廃

 

本指針の改廃の要否及び改定する場合の改定作業は、委員会により実施します。